クリスマスシーズンに読みたい絵本5冊
クリスマスまであと11日。え、あと11日!?
まだ1歳ちょっとの猫がいる我が家では、作り物の葉をむしゃむしゃ食べてしまう事件が発生するため、今年はクリスマスツリーなし。ほかにクリスマスっぽい飾りつけをすればいいんだろうけど、実はわたし、雑貨を飾るのが苦手で。吊るしたり、貼ったりというのなら、掃除の邪魔にならないのでいいんだけど、そうすると猫たちが喜んで飛びかかったり、「なにこれなにこれ」って触りたがったり…。
そういうわけで、ちっともクリスマスムードの漂わない、普通の日々を過ごしている。
数年前までは、子供たちが通う幼稚園で行われていたアドヴェントの行事や、クリスマス祝会の準備などで、自然とクリスマスへ向けて気持ちが高まったものだった。アドヴェントクランツのろうそくに、1本ずつ火が灯っていくあの感じがとても懐かしい。
今回は、そんなアドヴェントにぴったりな、クリスマスの絵本を紹介する。
うまやのクリスマス
何度も紹介しているような気がするけど、クリスマスの絵本といえばこの本。言葉がとても美しく、静か。そして、絵が美しい。
むかし むかし あたたかい うまやのなかで
うしは ひくくなき
ろばは たかくなく
うまの あしぶみと
かちくの いきがきこえる
クリスマスの本当の意味を知らない子にとっては、少々、いやかなり物足りない絵本かもしれない。この絵本には、テレビで流れてくるような賑やかさ、華やかさのかけらもない。クリスマスについての詳しい説明が書いてあるわけでもなく、ただ淡々と、静かに、クリスマスの1日が描かれている。
クリスマスとは、という絵本ならもっと他に適当なものがある。例えば、
とか
クリスマスのものがたり (世界傑作絵本シリーズ―日本とスイスの絵本)
- 作者: フェリクス・ホフマン,しょうのこうきち
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 1975/10/10
- メディア: 大型本
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とか。
それでもわたしはこの美しい絵と言葉でクリスマスの様子をあらわす、「うまやのクリスマス」が大好きだ。
やまあらしぼうやのクリスマス
この絵本に出会ったのは幼稚園のとき。幼稚園の配本で買ってもらった記憶がある。子供たちのためにどうしてもこの絵本を買いたかったんだけど、タイトルが思い出せず、探すのに苦労した。しかも、わたしが覚えていた表紙はこれではなかった。探していたのは、カバーをはずしたこちらの表紙の方だった。
この絵本の感想は多分ふたつに分かれるのではないかと思う。以前、Amazonでストレートな批判レビューがあったけど、今見てみたらなくなっていた。そのレビューには、確かこんなことが書いてあった。
動物たちのいじめがひどくて気分が悪くなった。絵本でわざわざここまでひどい様子を描写する必要があるのか?子供もこの絵本を読むと嫌がった。
たしかにそうなのだ。この絵本には、主人公であるやまあらしのぼうやに、他の子供たちがひどい言葉を浴びせかける、いじめの場面が出てくる。先生はどうしたんだ?と言いたくなるくらい、ひどい。
それなのにだ。不思議なことに、子供の頃のわたしはこの絵本が大好きだった。自分で読んでいたので、おそらく小学校の低学年くらいだろうと思う。小学校に入って、明確に仲間はずれをされるようになったわたしにとって、この絵本は拠りどころだったのかもしれない。
自分よりいじめられているやまあらしぼうやを見て安心したかった?いや、そうじゃない。やまあらしぼうやのお母さんの言葉を聞きたかったから。やまあらしぼうやがいじめられて泣いて帰ってくるたびに、お母さんがやさしく言い続けたこの言葉。
ぼうやは おかあさんの こころのひかり
この言葉に込められた思いを想像すると、あのころとは違う涙が出てくる。
ぐりとぐらのおきゃくさま
ぐりとぐらのシリーズは、よれよれになるほど読んだ。その中でも、実は一番大好きなのが、この「ぐりとぐらのおきゃくさま」だ。理由はとっても簡単。
そのケーキときたらー
チョコレートと クリームが どっさりのっています。
ひげのおじいさんが作ってくれるクリスマスのケーキが、ものすごくおいしそうなのだ。しかも大きいの!すっごく!
わたしのことより大人のことが優先される家で育っていたので、クリスマスケーキなんて用意してもらったことがなかった。たとえば兄弟や姉妹がいれば、「クリスマスケーキが食べたい!」という声も2倍になっただろうし、「クリスマスケーキ食べたかったよね」と慰め合うこともできただろうけど、なんせわたしはひとりっ子。粛々と受け止めて、そんなものだと思ってやり過ごしていたんだろうと思う。
プレゼントもなく、焼き魚や煮物が食卓にのぼるクリスマス。そんな夜には「ぐりとぐらのおきゃくさま」を読んで、お話の世界にひたったものだ。こう書くと不幸そうに見えるかもしれないけど、そんなことはない。安心して思いきり飛び込める世界があるというのは、とてもしあわせなこと。ぐりとぐらは、いつでもあたたかく迎えてくれる友達だった。
しろくまくんのクリスマス
この絵本は子供たちへのプレゼントのために選んだもの。書店で1冊1冊手にとって見ながら、 わかりやすいストーリーと、緻密な絵に惹かれて、これに決めた。ちょうど長男が2歳か3歳のクリスマスだったと思う。
雪の原にあいた穴をのぞきこんだしろくまくんが落っこちた先は、サンタクロースの部屋。サンタクロースに連れられて、しろくまくんはクリスマスプレゼントが作られていく様子を見学していく。
その描写が細かくて美しいのだ!
わたしが一番好きなのは、出来上がったプレゼントをラッピングする部屋のページだ。色とりどりの美しい紙やリボンがいっぱいでワクワクする。もう一人の隠れキャラでもあるペンギンの姿を追いかけていくのもおもしろい。絵だけでも十分楽しめる。
もちろん、ストーリーも素敵だ。
「これは、わたしから きみへの クリスマスプレゼントだよ。ともだちになった しるしにね!」
「うわあ、ありがとう!」
しろくまくんは、つつみを ひらいて めを まるくしました。
「あれ、ほんだ!ぼくの ことが かいてある!」
子供たちが成長し、お話の世界も楽しめるようになってからも、この絵本は子供たちのお気に入りの1冊となった。今でもそっと1人でこの絵本をひらいて、満足そうにしている次男の姿を見かけると、こちらまで嬉しくなる。
急行「北極号」
これは長男が赤ちゃんの頃に運営していたブログで、読者の方に教えてもらった絵本だ。「もう少し大きくなってからになると思うけど」という言葉のとおり、当時の長男にはまだまだ、まーだまだの内容だった。でもそれ以来ずっと、この絵本はわたしのお気に入りだ。
「急行 北極号」という名の汽車にのりこんで、北極点を目指す不思議な旅。乗客はパジャマ姿の子供たち。そして、北極点にはサンタクロースと、たくさんの小人たちが待っていた。その旅の様子が、パステルの独特なタッチと色合いで、あたたかく、夢のように美しく描かれている。
長男も、次男も、サンタクロースはきっといると信じている。周りの友達たちは、この絵本の主人公の友達のように、「サンタクロースなんているわけがない」「サンタクロースは家の人だよ」と言うそうだ。
ぼくはすっかりおとなになってしまったけれど、鈴の音はまだ耳に響く。心から信じていれば、その音はちゃんと聞こえるんだよ。
いつまでも鈴の音が聞こえる人であってほしい、と願うのは大人の勝手な思いかもしれない。それでも、わたしは、いつまでも鈴の音が聞こえる人でありたかったなと思う。
映画のお話は、ともたさんのところでどうぞ。
おわりに
クリスマスの絵本はもっともっとたくさんある。ここに書ききれなかった絵本もたくさん。
・子うさぎましろのお話
・よるくま
・サンタクロースっているんでしょうか?
・ちいさなもみのき
などなど。
いろんなクリスマスの過ごし方があるように、いろんなクリスマス絵本がある。わたしの5冊と、だれかの5冊はきっと違うはず。ぜひ、みなさんのお気に入りの絵本を教えていただけたらと思う。
おしまい。
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